先日紹介した仕組債「日経平均リンク債(円建) 3.00% 1年債」。
怪しい金融商品ではあるが、「儲かりそうか、そうではないか」について、期待値を見積もることで、判断してみた。
1.ノックインの確率1987年から2010年までの24年間の日経平均株価を使って見積もってみる。

上の図は、年ごとの年初からの最大下落率の推移である。
つまり、1年間の安値は、年初の始値からどれくらい下がった水準にあるのかを示したグラフとなる。
これによると、35%以上の下落があったのは24年中3年、すなわち
ノックインの確率はおよそ「3/24」と予想できる。
(※実際の確率はもっと統計的に正当な手法で見積もるべきであるが、ここでは簡単のため、上記のように計算した。)
2.リターンの期待値の計算以下の2点を仮定して計算する。
①ノックインした場合、リターンは日経平均の下落率だけ削られる。この下落率は30%とする。
②ノックインしなかった場合、リターンは期待通りの年率3%となる。
この時、もし50万円投資したならば、1年後の期待リターンは
50万×(0.70×(3/24)+1.03×(21/24))=
49万4375円※1 0.70と1.03はそれぞれ、①、②の場合の資産の増減の割合
※2 (3/24)、(21/24)はそれぞれ、①、②の確率
これを見ると、投資の期待リターンは
元本割れとなる。
なお、今回、リターンを甘めに計算した。しかし、実際には、ノックイン時の日経平均の最終的な下落率は30%に収まらない場合が多いであろう。また、早期償還条項により、この3%もの利金は受け取れない事が多いはずだ。
このため、おそらく
本当の期待リターンはこれよりもかなり低い水準になる。
3.まとめと雑感期待リターンは、多くても投資金額以上にはならない(元本割れ)と予想できる。
このため、この仕組債は「買うべきではない」金融商品だと思われる。
ここからは完全な憶測だが、おそらく証券会社や銀行の販売員は、目論見書だけは当然熟読しているはずだが、このような計算はしていない。
このため、販売員でさえ、この種の金融商品の理不尽さを見抜けず、騙されて本当に善意で販売している可能性がある。
つまり、投資家は、自分でもリターンの見積もりをする必要がある。(当たり前か。)
結論:
「SBI証券の「日経平均リンク債」は購入を推奨することができない。」関連記事:
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SBI証券の仕組債「日経平均リンク債(円建) 3.00% 1年債」・
「日経平均リンク債」の目論見書における、リスクを過小評価させる表現
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