資産運用の世界では、「72の法則」なるものが知られています。
この「72」の導出方法についてまとめておきます。
1.72の導出方法年利 r で n 年間運用した時、元本が 2倍になったとすると、
(1 + r)^n = 2 ・・・①
が成立します。
これを n について解けば
n = ln2 / ln(1 + r) ・・・②
ここで分母のln(1 + r) をテイラー展開の2次近似をすると
ln(1 + r) ≒ r - 1/2 * r^2
これを②式に代入し整理すると
n ≒ {ln2 / (1 - 1/2 * r )} / r ・・・③
年利が 8% の時、すなわち r=0.08で{ } 内がおよそ0.72ですから
n ≒ 0.72 / r
となり、72が導かれます。
2.「72の法則」の利用時の注意上記の通り、72の法則は年利8%程度の時に最も精度が出るように調整された近似式ですので、8%からずれますと、真の値からの乖離が大きくなります。
例えば年利が 8% より小さいときは、③式の { } 内は 「r が小さい」⇔「( ) 内の値が大きい」⇔「{ } 内の値が小さい」となり、結果③式は「nが小さい」となります。これを言い換えると、「72の法則」の計算結果は真の値と比べ、上方乖離した値になります。
逆に年利が 8% より大きいときは、「72の法則」の計算結果は真の値と比べ、下方乖離した値になります。
wikipediaに乖離の程度を示す表が載っていますので参照してみてください。
http://en.wikipedia.org/wiki/Rule_of_72 (リンク最終確認:2012年6月7日)
3.…そもそも「72の法則」は使わない方が良い?まあ、上記のように乖離に注意して使うくらいなら使わない方がマシです。②式の真の値を使うべきです。72の法則は古くは14世紀に提唱された法則ですが、我々が生きている21世紀ではwindowsに関数電卓が入っていますし、表計算ソフトでも対数計算が簡単にできます。
また、「72の法則」は「資産が2倍に増えるのにかかる時間」が分かったところで、「3倍に増えるのにかかる時間」は分かりません。このように柔軟性を著しく欠く法則です。
こんな法則、基本的に何の役にも立ちません。
「72の法則」はFPが教養程度に知っておればよい法則だと個人的には思っています。
追記「72の法則」は、72の約数が多い事もあり、簡易な(厳密でないが早い)複利計算には利用できそうです。また、うまく使えば「資産が5倍に増えるのにかかる時間」などを推計できる場合があります。興味のある方は、コメント欄の吊られた男さんの「72の法則」の利用方法をご参照ください。
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