「効率的市場仮説」や「株価が完全なランダムウォークである」を仮定した場合、投信のパフォーマンスの決定的要因はコストであるという結論に辿りつきます。という訳で、信託報酬が低めのファンドが高パフォーマンスであると信じている人も少なくない気がします。
本当でしょうか。データを見てみました。
1. 投信の信託報酬とパフォーマンスとの関係(概観)
信託報酬の程度毎に、投信パフォーマンス(リターン)の平均値を算出しました。データは、2012/11/8前後にSBI証券の投信検索ツールFサーチで取得しました。
※信託報酬ごとにリターンの平均値を算出
※エラーバーには√分散÷ファンド数を利用最も良いパフォーマンスだったのは、1年リターン・3年リターンともに信託報酬が1~2%のファンドでした。信託報酬は安すぎてもロクな運用ができないし、高すぎてもパフォーマンス低下要因になっている可能性があると分かります。
少なくとも、信託報酬が安いからといって、リターンが良いというシンプルな関係は観測できません。
2. アセットクラス別 信託報酬とリターンとの関係
平均値にはアセットクラスによるバイアスがかかる可能性がありますので、アセットクラス毎の平均値もいくつか見てみます。
i) 国内株式

信託報酬1~1.5%のファンドが平均値が最も良いパフォーマンスとなります。あまり信託報酬が高くても良い成績にはならないようです。
ii) 先進国株式

信託報酬1%未満のものも良いですが、2.0%以上のものが一番頑張ってくれています。多少信託報酬が高くても、高パフォーマンスが期待できるなら投資対象として検討するのも良いかもしれません。
iii) 先進国債券

信託報酬が高ければ高いほど、高パフォーマンスでした。債券投資はファンドマネージャーの腕がパフォーマンスに比較的大きな寄与をするのかも知れません。
iv) 新興国株式

3年リターンは、高コストなほど低パフォーマンスでした。新興国株式市場は不透明な感じがしますが、ファンドマネージャーの腕よりも、インサイダー情報を獲得できる人たちが得する市場なのかも知れません。
3. 結論・留意点
信託報酬が高いからといってパフォーマンスが低くなるというデータは得られませんでした。ある程度の信託報酬を受け取っているファンドの方が好成績であるという可能性も十分にあります。
ただし、上記情報には生き残りバイアスやその他のバイアスがかかっている可能性があります。また、所詮はある一定期間のパフォーマンスですので、別の期間ではどうなるのか、超長期ではどうなるのか、が全く分かりません。
是非誰か他のちゃんとした投信ブロガーが定点観測し、統計情報を公開して欲しいところです。(私はやりません。)
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