金融商品の買付手法の1つである「等金額買付」は、「等口数買付」と比べて、平均取得価額の観点で有利だと知られています。(ドル・コスト平均法の説明などで、良く言及されていますよね。)
この反対に、運用資産の売却時は、「等口数売却」が、「等金額売却」と比べて、平均売却価額の観点で有利となります。具体例を挙げ、それに関する特性をまとめます。
1. 投信売却時の「等口数売却」と「等金額売却」との比較
例として、下図に示す通り、基準価額が8,000円→16,000円→6,000円→10,000円と推移した投信を考えます。(投信の基準価額は、1万口あたりの値段とします。)
この投信を、1万口ずつ「等口数売却」した場合と、1万円ずつ「等金額売却」した場合とを比べます。
※クリックで拡大します。結果です。「等口数売却」も「等金額売却」も、どちらも4万円分売却しています。一方で、解約した口数は、「等口数売却」が40,000口、「等金額売却」が45,417口で、「等金額売却」の方が10%以上多くの口数を解約して減少させた事になっています。
このことからも、
「等口数売却」は、「等金額売却」と比べて、平均売却価額の観点で有利だと分かります。「等口数売却」は、「高値で多く売り、安値ではあまり売らない」事がシステマティックにできる、有利な手法だと考える事ができます。
※数式を用いた一般論(過去記事)は↓
投信運用出口戦略には、「等口数解約」が効果的注意) 資金が尽きるタイミングの違い次第では、「等金額売却」の方が「等口数売却」よりも有利(平均売却価額が上がる)となるパターンも存在しています。2. 「等口数売却」と「等金額売却」との、その他の特性の比較
その他、メリット・デメリットを箇条書きにします。
2-1. 等口数売却
メリット:
売却が完了する時期を読む事が出来る。
デメリット:
売却時の売却金額が読めない。(キャッシュフローが安定しない。)
自動売却(等口数売却)のサービスは、まだ無いため、手動の解約が必要になる。
2-2. 等金額売却
メリット:
売却時の売却金額が決まっている。(キャッシュフローが安定している。)
デメリット:
売却が完了する時期が読めない。(想定よりも基準価額が上がれば、売却期間が長くなる半面、基準価額が下がれば、資金が尽きる時期が前倒しとなる)
3. 所感
3-1. 結局は環境に応じて柔軟に
平均売却価額の事のみを考えると、「等口数売却」が良さそうですが、一長一短なので、環境に応じて柔軟に解約手法を設定していきたい所です。
3-2. 「等金額売却」のサービスをうまく利用するのも有り
「等口数売却」と「等金額売却」とで平均売却価額が異なる原因は、基準価額の変動です。ですから、売却前後のライフステージで、ボラティリティを抑えた運用をしていれば、「等金額売却」によって、「等口数売却」と比べて不利ではない売却ができ、かつ安定したキャッシュフローが得られるため、良いかも知れません。
3-3. 出口では毎月分配型投信の利用も有り
基準価額が高い時に多く分配をして、基準価額が低い時に分配金を減らすタイプの毎月分配型投信は、「等金額売却」に比べて「等口数売却」に近いキャッシュフローとなります。ですので、出口戦略に有効に利用できる場合があります。
- 関連記事
-