ライフステージレベルの長期的な視点では、資産運用は、
①(給与などで得た)現金を金融商品に投じる段階
②保有する金融商品を売却し、現金を得る段階
の2段階に分かれる事があります。
今回は、②の売却時の手法について考えます。投資信託の等口数解約と等金額解約とを比較し、等口数解約の方が有利そうだという事を説明します。
同時にそれぞれのメリット・デメリットを挙げてみます。
1. 解約シミュレーションとその結果
1-1. シミュレーション設定
某外債型投信の運用損益実データを使いシミュレーションします。最初10,000千円保有(基準価額10,000円で10,000千口)していたとして、これを毎月解約します。
解約は2種類で
①毎月50千口ずつ解約した場合(青)※等口数解約
②毎月60千円ずつ解約した場合(赤)※等金額解約
のそれぞれの場合での運用状況の変化を考えます。
1-2. シミュレーション結果
結果は下図のようになりました。
※クリックで拡大します。1-3. 上図の説明
青線上方:
等口数解約での総資産額(保有投信+解約後の受け取り金)推移です。
青線下方:
等口数解約での月々の解約金です。等口数解約では、区間①のように運用成績が悪い時は、1口あたりの価額が小さくなるため、受け取る金額が少なくなります。逆に区間②のように運用成績が良い時は、受け取る金額が多くなります。
赤線上方:
等金額解約での総資産額(保有投信+解約後の受け取り金)推移です。
赤線下方:
等金額解約での月々の解約金です。等金額解約では、投信の運用状況の良し悪しに関わらず、月々同じ金額を受け取る事になります。
1-4. パフォーマンス比較
最終的には2014年3月に
等口数解約:12,104千円
等金額解約:11,670千円
の総資産になりました。
等口数解約の方が433千円多くの資産を持つ事になりました。同じ金融商品での運用でも、解約手法の違いにより、パフォーマンスが異なる事になります。
2. 結果分析と、等口数解約と等金額解約のメリット・デメリット
2-1. 結果分析
上記のシミュレーションでは、等口数解約が等金額解約と比べて良い成績となりました。この要因を2つ程挙げてみます。
要因①
等口数解約では、運用状況が良くない「区間①の部分」での解約金額が少なくなっています。解約金が少なかった分、区間②における上昇相場でのリターンが多くなりました。安い所で売らなかった事が、等口数解約でのパフォーマンスが良かった要因の1つです。
要因②
等口数解約では、運用状況が良い「区間②の部分」での解約金額が多くなっています。この期間に高値で売る事が出来た分、等口数解約のパフォーマンスが良くなっています。
2-2. 等口数解約と等金額解約のメリット・デメリット
以上の結果を踏まえ、各解約手法のメリット・デメリットで考え付くものを列挙してみます。
等口数解約のメリット:
①安値で手放す金額が少なくなるため、運用成績を良くする事が期待できる
②高値で売る金額が大きくなるため、運用成績を良くする事が期待できる
③同じ口数ずつ解約するため、解約する期間の長さを読む事ができる
等口数解約のデメリット:
①受け取る金額が投信の運用成績に依存するため、不安定となる
②一方的な右肩上がり相場の場合、解約金が増える事に伴い更なる上昇の恩恵を得にくい
等金額解約のメリット:
①受け取る金額が投信の運用成績に依存せず安定する
②一方的な右肩上がり相場の場合、解約金が増えない分だけ更なる上昇の恩恵を受けられる
等金額解約のデメリット:
①安値で解約する口数が多くなるため、安値売りの多さから運用成績が悪くなる事がある
②高値でも売る金額が大きくならずに一定のため、利益確定の機会損失となる事がある
③解約する口数が投信の基準価額に依存するため、解約する期間の長さを読む事ができない
3. その他・所感
等口数解約の方がメリットは多そうです。ドル・コスト平均法の逆で、解約時には等口数解約が、等金額解約と比較し、平均売却価額の観点で有利だという事が数式を使って示せたりもします。
参照:
投信運用出口戦略には、「等口数解約」が効果的(過去記事)ただし、値動きによっては等金額解約の方が資産総額が大きくなる事もあり、一概には言えません。結局は、「いかに安く買い、高く売るか」という運用側面と、「安定したキャッシュフローの価値・重要性」という生活面での折り合いで決める事になるのかも知れません。
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