資産運用を「キャッシュフロー流列(cash flow stream)を有利な形に変換する事」と考えると、投資哲学について多くの視点を持つのに便利です。キャッシュフロー流列の例を挙げ、そこから読み取れる事について述べてみます。
1. キャッシュフロー流列の例:債券投資の場合
簡単のため、債券投資でのキャッシュフローの流れについて考えます。10万円の債券を購入し、利金と償還金を受け取った際のキャッシュフローは下図になります。このようなキャッシュフローの推移をキャッシュフロー流列と呼びます。
※クリックで拡大します債券への投資をキャッシュフローの視点で見ると
①最初に10万円を支払い損をする
②一定時間後に、利金と償還金を受け取る
となります。最初の支払いよりも多くの利金と償還金を受け取る事で、長い目で見れば資産が増えています。このように、キャッシュフロー流列をより望ましい形に変形する事を資産運用と考えると、後述するように多くの視点を得られます。
2. キャッシュフロー流列で得られる視点
2-1. 資産運用において、「安く買って高く売る」事がなぜ大切か?
安く買って高く売る。当たり前ですが、どうしてでしょうか。安く買う事は、最初のキャッシュアウトの量を減らし、累積損益のグラフを上方向へとシフトさせる事で、最終利益を増やします。高く売るのも同様に、最後のキャッシュインを増やす事で、最終利益を増やします。
このように、キャッシュフロー流列を使えば、「安く買って高く売る」事の大切さを、定量的・視覚的に表現する事が可能になります。
2-2. どちらが望ましいキャッシュフロー流列か?
キャッシュフロー流列を比較し、利金を受け取ってしまうのが得か、それとも再投資をして最後により多くのキャッシュを得るのが得か?を考える事もできます。(結論を出すためには相場動向や投資家のライフステージも考慮する必要がありそうです。)
3. 現在割引価格・修正価値
低金利ではあまり考える必要がないと思いますが、キャッシュフローを考える際は、金利コストを割り引いた「現在割引価値」で考えた方が良いという考え方は、あまりに有名です。
この他に、ライフステージによるお金の重さによる補正を考えても面白そうです。例えば、
①20代で総資産50万円の時に得た10万円
②50代で総資産5,000万円の時に得た10万円
③70代で年金生活の時に得た10万円
は同じ10万円ですが、それで得られる効用(満足の度合い)の大きさが違う事を考慮するという考え方です。(②の10万円は他より軽いです。)
この補正を使えば、20代での浪費生活の合理性や、60代の元本払い戻し型投資信託への投資の正当性が説明出来たりして、面白そうです。
以上のように、キャッシュフロー流列は投資判断に多くの視点を提供してくれます。投資で迷った時はキャッシュフロー流列を考えて判断材料にすると良い事があるかも知れません。
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